相続コラム

相続トラブルでは調査が大事!戸籍などの資料収集から弁護士に依頼すべき理由

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被相続人が亡くなり、相続が発生すると、様々な書類・資料を集める必要があります。

相続手続きを円滑に進めるためには、手続きに必要な資料、証拠を迅速に収集することが重要となります。

特に、被相続人と疎遠であったり、対立する相続人が情報を独占しているような場合には、証拠資料を集めるためのきっかけ・情報が全くないこともあり、さらに必要な資料・書類の中には、弁護士などの専門家でなければ取得が困難なものも多くあります。

この記事では、主な相続関係資料の集め方と、弁護士に依頼して調査を行うことのメリットを紹介します。

この記事の内容

相続トラブルにおける調査・資料収集の重要性

ご家族が亡くなり相続が発生した場合、相続手続きを進めるため、戸籍や預貯金の明細、不動産の登記など、様々な資料を集めなければなりません。

相続人の間でトラブルが発生していなければ、協力して必要資料の収集を行うことができます。一方で、遺産を独占しようとする相続人がいる場合や、特定の相続人が生前から被相続人(亡くなった方)の囲い込みをしており、遺産の情報を開示しない場合など、「どうやって相続に関係する資料を集めてよいかわからない」というケースもあります。

ここでは、相続手続きに必要な資料の集め方や、弁護士に調査を依頼した場合のメリットなどについて解説いたします。

具体的な資料収集の方法

具体的な資料の種類別に、取得が必要になる理由や集め方のポイントをご説明します。

戸籍

相続手続きを始めるにあたり、まずは戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、除籍謄本(除籍全部事項証明書)などの取得が必要になります。これは、相続手続きの当事者を確定するためです。

すなわち、相続手続き(遺産分割)に参加する相続人は、法定相続人となります。このため、まずは法定相続人の確定のため、被相続人及び相続人の出生以降の全ての戸籍を取り寄せ、他に相続人がいないかを調査します。

戸籍は、本籍地の市区町村役所・役場で取得します。被相続人の戸籍や自分自身の戸籍はご自身でも取得することができますが、他の相続人の戸籍になると、個人情報保護を理由に役所から開示を拒否されることがあります。ご自身で相続手続きを進めている方の中では、ここでつまずいてしまうケースが多いといえます。

しかし、弁護士であれば、職務上請求という制度を利用して、相続手続きに必要な範囲で被相続人・相続人全員の戸籍を収集することができます。

遺言

戸籍関係の収集が完了したら、遺言(いごん)の有無を調べます。

遺言のうち、1989年1月1日以降に公証役場で作成された公正証書遺言であれば、公証役場において検索(あるかないかの調査)を行うことができます。公正証書遺言が見つかった場合、遺言が作成された公証役場に依頼して謄本(写し)の交付を受けます。

他方で、自筆証書遺言については、このような検索を行うことができません。被相続人の自宅や他の相続人が保管していないかなど、地道に探索を行う必要があります。

なお、2019年施行の法改正により、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が始まりましたが、2022年現在、この制度がまだあまり知られていないことや、ご本人が法務局に出向いて手続きを行う手間が発生するため、利用している方はあまり多くないと考えられます。

遺言の調査もご自身で行うことができますが、遺言検索の方法や謄本の請求などのために公証役場まで行かなければならない場合もあるほか、書類上の手続きも複雑になります。弁護士であれば、遺言調査に専門的なノウハウを有していますから、遺言の調査から弁護士に依頼するのもひとつの手です。

また、遺言があると、その後の相続手続きの流れが大きく変わってきます。そもそも発見された遺言が法律上有効なのか否か、疑問があるケースも多くあります。遺言の有無はもちろん、遺言の有効性に疑問のある方も、一度弁護士に相談されるとよいでしょう。

預貯金、証券などの金融資産

預貯金や株式などの金融証券については、それぞれの金融機関で相続手続きを行う必要があります。金融機関により手続きの進め方や必要書類がバラバラであるほか、相続人全員の協力がないと手続きを進められないこともあります。

また、被相続人がどの金融機関に口座を持っていたかわからない場合には、まず口座の有無から調査を行う必要があります。

すなわち、被相続人の預貯金の通帳、キャッシュカード、郵便物やネットバンキングの利用状況から調査をしていきます。具体的には、銀行などの金融機関に被相続人の口座の有無を照会し、口座があれば残高証明書・取引明細の取り寄せを行います。

取引明細を取り寄せて、口座の動きを分析することで、生命保険や損害保険への加入や被相続人が亡くなる前後の不自然な引出し(引出し、払戻し)、使途不明金などを発見できることもあります。

こうした預貯金等の調査も、相続人ご自身でも行うことは可能ですが、書類の手続きが複雑であったり、金融機関の支店が遠方であったりして、かなりの手間がかかります。また、もし預貯金の調査漏れがあると遺産分割をやり直さなければならなくなります。

弁護士であれば、専門的なノウハウに基づいた調査のほか、弁護士法第23条の2に基づく照会(「弁護士会照会制度」といいます)により、「口座があるかどうかわからない、支店もわからない」という状態からでも、漏れなく預貯金等の調査を行うことができます。

不動産

不動産、特にご自宅の名義変更を行うことが、相続手続きの大きな動機になっている方は多いと思います。

不動産の相続手続きに必要となるものは、基本的には、登記事項証明書(登記簿謄本)となります。

所在が明らかな被相続人の自宅や貸アパートなどの不動産については、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

一方で、所在がわからない不動産については、①市役所や都県税事務所からの固定資産税納税通知書(土地の地番や建物の家屋番号記載あり)、②市区町村役所の名寄帳(被相続人が所有する市区町村内の課税不動産の全てが掲載)、③法務局の公図(私道など非課税の不動産で名寄帳に掲載されていない不動産が記載)、④共同担保目録(借入れの共同担保となっている不動産が記載)などに記載された情報をもとに、登記事項証明書を取得し、不動産の調査を進めます。

不動産は目に見えるものですから、調査が容易に思えますが、思わぬ落とし穴に注意が必要です。それは、ご自宅以外の不動産も遺産に含まれ、相続手続きを行わなければならないという点です。貸アパートなどの収益物件は賃料が入ってきますから、調査漏れになることは少ないと思われますが、田畑や山林、遠方の土地などは、固定資産税すらかかっていないケースもあり、手続きを忘れがちです。また、何世代も前から名義変更がされていない場合や、抵当権が残ってしまっている場合、共有持分のみが相続の対象となる場合など、法律上複雑な手続きが必要となるケースも多くあります。そのような場合には、弁護士の関与が必須となりますので、ご相談ください。

保険

被相続人が生命保険、火災保険などに加入していた場合、保険金の受け取りや保険の引継ぎのため、相続手続きを行う必要があります。

特に生命保険については、受取人が誰であるかによって遺産分割の対象となるか否かが左右されるなど、法律上の位置づけが複雑になっています。

また、解約返戻金のある火災保険(建物更生共済など)については、引き継ぐか否か、引き継ぐとしたら誰が引き継ぐのかについて争いになることもあります。

被相続人と同居していた相続人であれば、どの保険会社とどのような保険契約を締結していたか把握している場合もあるでしょう。一方で、被相続人と別居していた場合には、どこにどのような保険があるのかわからないというケースも散見されます。

保険の調査は、保険会社からの郵送資料、預貯金口座の引落しやクレジットカードの明細などをもとに行います。弁護士であれば、保険会社に対して弁護士会照会を行うことで、どのような保険を契約していたのか、効率的に調査を行うことができます。

負債・借金

相続手続きにおいては、被相続人に負債(借金)があったか否かも、重要なポイントになります。

相続では、プラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産(負債)も引き継がなければなりません。このため、負債が資産を大きく上回っているような場合には、相続放棄をすることも視野に入ります。

プラスの財産については被相続人から伝えられているものの、負債については秘密にされていたり、被相続人自身も認識していない、思わぬ債務が見つかったりすることもあります。

負債の調査方法として、金融機関のローンやキャッシングについては、預貯金口座から引き落とされますので、被相続人名義の通帳や取引明細から調べることができます。クレジット会社からの借り入れや未払いについてはクレジットの明細を確認します。

また、消費者金融などについては、信用情報機関に確認することによって債務を把握できます。全国銀行個人信用情報センター(KSC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)の3つが代表的な信用情報機関です。

なお、個人や金融機関以外の企業からの借り入れ、保証債務などについては、信用情報に登録されないため、郵便物の調査や関係者への聞き取り調査などを行う必要があります。

負債(借金)がある場合でも、負債を負った時期や内容によっては、すでに時効が成立しているなど、返済の義務がない場合もあります。負債を返済する義務があるか否かについては、法律上の専門的な判断が必要になりますので、自己判断せず、必ず弁護士に相談するようにしてください。

相続調査・資料収集にお困りの場合は弁護士へ

ここまで見てきたように、相続手続きにおいては、多種多様な資料、書類を集める必要があります。特に、他の相続人とトラブルになっている場合や、遺産隠しをされている場合には、迅速に証拠収集を行う必要があります。証拠収集が遅れると、無断で預金を引き出されてしまったり、知らないうちに遺言を執行されてしまうリスクなどがあります。

相続関係資料の多くは、相続人自身でも取得できるものですが、中には弁護士でないと取得が難しいものもあります。また、専門家でないと調査や資料取得に多大な時間がかかり、証拠が散逸してしまったり、遺産分割で不利になってしまうケースもあります。

相続の手続きを進めたいが遺産がどこにあるかわからない、相続人間で揉めており情報が開示されないなどのお悩みをお持ちの方は、お早めに弁護士に相談されることをお勧めいたします。

この記事の監修

小湊 敬祐

Keisuke Kominato

  • 弁護士
  • 上野法律事務所
  • 千葉県弁護士会所属

紛争性のある相続案件を得意とし、不動産や事業用資産が関係し、法務・会計を横断する案件に注力しています。遺産の評価や分割方法について相続人間で協議がまとまらない、遺産の範囲外の問題(使途不明金、自社株式、賃料の帰属など)でお困りの場合など、ぜひ一度ご相談ください。

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