相続トラブルの解決事例 17

法定相続人のひとりから、寄与分が認められにくい内容で法定相続分以上の遺産取得の意見が出されたため、弁護士が調停で話し合いをしながら解決を目指し、早期に分割方法を確定することができた事案

解決事例17

解説弁護士
谷 靖介
トラブル内容
遺産分割協議
解決方法
調停
ご依頼者
K.Yさん
受任年
2019年
解決年
2019年

相続トラブルの概要

ご相談者には母方のおば様がいらっしゃいましたが、おば様にはお子様がいらっしゃらなかったそうです。以前は、ご相談者とおば様は親しくお付き合いされていたものの、ここ数年おば様との連絡が途絶えていました。そうしたところ、突然そのおば様の成年後見人であった司法書士より、おば様が亡くなられたとの連絡がありました。

その後、おば様が認知症により成年後見が開始されていたこと、おば様の相続人が、おば様の兄弟姉妹(又はその子ども達を含む)10名になること、おば様の遺産が約数千万円になることが判明しました。

おば様は、晩年を介護施設に入所して過ごされていたそうですが、他の相続人の1人に、介護施設の紹介や定期的な面会等を行っていた方がいらっしゃいました。その後、その相続人の方から法定相続分を超える遺産を取得したい趣旨の意見がだされました。

そこで、ご相談者の方は、他の相続人の申し出に対してどのように対応するのか分からず、当事務所に相談にいらっしゃいました。

解決に向けてのポイント

ご依頼者様のお話を伺って、解決に向けて注視すべきポイントが3つありました。

寄与分(療養看護型)の要件を充たすか

療養看護型の寄与分として認められるには、親族としての通常期待される程度を超える「特別の貢献」である必要があります。

本件では、他の相続人の方は、ご自宅に近い老人介護施設を紹介し、おば様はその施設にて数年間生活されていました。その間、他の相続人の方は、定期的にお見舞いに行かれたりおば様の外出のお付き合いをされたり等のお世話をされていたようでした。もっとも、おば様は介護施設で暮らし、当該相続人の方が自宅介護をされたというわけではなかったとのことでした。

なお、施設の利用料等の介護にかかった費用は、成年後見人が管理していたおば様自身の財産から支出されていました。このような事情からすると、施設介護であり費用負担もしていないことから、一般的には、療養看護型の寄与分としては認められないだろうと思われました。

遺産の調査

おば様の遺産分割に際し、ご相談者には遺産に関して把握されている情報が少ないという事情がありました。そこで当職は、おば様が成年後見を受けていた期間中に、家庭裁判所に提出されていた資料を取得し、財産内容に関する調査を行うことにしました。

遺産分割手続の進め方

前述のように、他の相続人の一部からは寄与分の主張がなされる見込みでしたが、その主張はあまり認められないものと思われました。このような場合、相続人間での協議もすぐに成立するとは限らず、期間をかけて何度も話し合いの機会を持つことが必要と考えられました。そして、相続人が多数いらっしゃる場合には、集まる場所の選定やスケジュール調整にも苦労することがあります。

そこで本件では、家庭裁判所で調停を行うことで、定期的に皆で話し合う場をつくることが適当と判断し、また、寄与分を主張する相続人の方にも、家庭裁判所の調停委員を通じて説得していただけることも期待しました。

解決に向けた交渉の経過

交渉にあたっては、大きく4つのポイントがありました。

調停前の協議

調停を提起する前に、相続人全員で集合し、遺産分割について協議しました。もっとも、最初の話し合いの時点では、特に寄与分に関する意見に隔たりが大きい状況でした。そこで当事務所の弁護士から、今後の話し合いを定期的に進めるためにも、調停で協議を続けることを提案し、全員から了承が得られました。

調停の管轄

遺産分割調停の管轄裁判所は、通常、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所とされています。もっとも、当事者の合意があれば、本来の管轄裁判所ではない家庭裁判所でも調停を行うことができます。

本件では、相続人が多数おられたため、皆が参加しやすい家庭裁判所を選ぶことになりました。

調停の進行

調停を申立後、1か月半後に初回期日が開かれました。その後、当事者が検討する時間もあったことから、調停の初期段階で相手方(寄与分を主張する相続人)より、遺産の数%程度の寄与分という、大幅に譲歩する旨の提案がなされました。

そこで、当事務所の弁護士とご依頼者にて方針を協議し、ご依頼者の方としても、他の相続人の方の貢献を全否定するつもりはなかったため、一定程度の寄与分であれば容認することとなりました。

その他の問題

寄与分以外にも、不動産の分割方法に関する問題もありましたが、その他の相続人の方々の協力もあり、早期に分割方法を確定することができました。

最終的には、第3回調停期日にて調停成立となり、調停に要した期間は約3か月で済みました。

当事務所が関わった結果

遺産分割調停を行った結果、寄与分を主張されていた相続人の方にも実情を早めに理解いただけたように思います。また、本件のような事案では、本来寄与分は認められにくいと思われますが、ご依頼者の方も柔軟に考えていただけたことから、比較的早期に解決することができたかと思います。

「遺産分割調停をすると、どの程度の期間がかかりますか。」とのご質問をお受けすることが度々あります。率直に申し上げるとケースバイケースで、半年程度で成立することもあれば、2年近くかかることもあります。

そういった意味では、本件のように3~4か月で成立したのは比較的早期に解決できたケースかと思います。

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